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「闇己様、あなたがどうされたいのかを聞きたいのですが……」
春海が闇己に自分を訪ねさせた意図を読み取った蓮は、彼にそう問い掛ける。
闇己は少し困ったように眉を寄せ、首を傾げた。
「春海様は私に仲介をさせようとあなたをここに導いたのでしょう。私は狛犬の長とも面識がありますし、他のあやかしにも通じています。闇己様、あなたは私に何をお望みですか?」
黙ったままの闇己に蓮が再び問い掛ける。
「蓮殿、自分は新しい稲荷の社を任されることになりました。しかし、私も奉られる稲荷の神もまだ幼い。社を守るには力が足りないでしょう。ですから、社を守れるような強いあやかしと契約したいのです」
丁寧な口調で、しかし力強く、闇己は蓮の問いかけに答えた。
「ふふ、闇己様も立派になられましたね。申し訳ありません。私、少し意地悪をしてしまいました」
蓮は穏やかに微笑み、続ける。
「闇己様の心構え、よくわかりました。私の知る限り、とても強くて気高いものを紹介しましょう」
闇己を認めてそう申し出た蓮に、彼は深々と頭を下げた。
その口調から蓮の知人、もしくは身内なのだろうと闇己はぼんやりと考える。
蓮と同じ白狐ならば、稲荷の社は安泰だろう。
「私が直接、案内をすることはできないのですが……」
申し訳なさそうにそう言いながら、蓮は札に地図を書き記す。
それは狭間の世界より先にある、あやかしの世界を示すものだった。
蓮の言う『とても強く気高い』あやかしはそこにいるらしい。
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