紫陽花

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僕が電車が苦手で、 嘔吐発作を起こすのを知って居る彼。 でも、 彼が居るだけで、 僕の嘔吐発作が、 よくなるとは思えない。 「余計なお世話・・・僕のこと放って置いてって何度言ったら分かるの?」 僕の顔はますます赤くなる。 彼の顔をまともに見れない。 彼は、 僕の肩を抱いた。 「大丈夫、もう君は一人じゃないよ。俺に全部任せて。」 ラッシュアワーの電車の中。 彼は僕を護ってくれた。 人の波から、 汚い空気から。 なぜか彼に肩を抱かれていると、 いい香りがしてきて、 僕は発作を起こさずに済んだ。 彼の手の温かさと、 あの紫陽花の香りが、 僕を落ち着かせた。 朝の電車で飴を舐めずに済んだのは初めてかも。 床に縮こまりもせず、 彼に肩を抱かれ、 電車の揺れに合わせ、 呼吸出来たのも、 初めてだった。 彼からはいい匂いがした。 あの紫陽花のような・・・ 僕の好きな紫陽花のようないい匂いが・・・ そのおかげだろうか、 僕は初めて嘔吐発作を起こすことなく、 大学のある駅に辿りついた。 「ね?大丈夫だったでしょ?」 にこにこした彼の微笑み。 眩しい・・・ なんて眩しい微笑み・・・ 僕は駅のホームで下を向いたまま、 真っ赤な顔で・・・
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