82人が本棚に入れています
本棚に追加
僕が電車が苦手で、
嘔吐発作を起こすのを知って居る彼。
でも、
彼が居るだけで、
僕の嘔吐発作が、
よくなるとは思えない。
「余計なお世話・・・僕のこと放って置いてって何度言ったら分かるの?」
僕の顔はますます赤くなる。
彼の顔をまともに見れない。
彼は、
僕の肩を抱いた。
「大丈夫、もう君は一人じゃないよ。俺に全部任せて。」
ラッシュアワーの電車の中。
彼は僕を護ってくれた。
人の波から、
汚い空気から。
なぜか彼に肩を抱かれていると、
いい香りがしてきて、
僕は発作を起こさずに済んだ。
彼の手の温かさと、
あの紫陽花の香りが、
僕を落ち着かせた。
朝の電車で飴を舐めずに済んだのは初めてかも。
床に縮こまりもせず、
彼に肩を抱かれ、
電車の揺れに合わせ、
呼吸出来たのも、
初めてだった。
彼からはいい匂いがした。
あの紫陽花のような・・・
僕の好きな紫陽花のようないい匂いが・・・
そのおかげだろうか、
僕は初めて嘔吐発作を起こすことなく、
大学のある駅に辿りついた。
「ね?大丈夫だったでしょ?」
にこにこした彼の微笑み。
眩しい・・・
なんて眩しい微笑み・・・
僕は駅のホームで下を向いたまま、
真っ赤な顔で・・・
最初のコメントを投稿しよう!