紫陽花

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この日の簿記の授業の後、 僕は先生から呼び出しをくらった。 なんでだろう? あまりにも僕が暗かったから? いやでも・・・ 授業はちゃんと聞いていたし、 黒板に書かれたものもちゃんと書き写していたし。 職員室に向かう。 憂鬱な瞬間。 人と向かい合うこと、 しかも先生と。 僕の心は落ち着かず、 また飴を舐めた。 職員室に先生を見つけ、 歩み寄る。 先生は僕を見つけ、 「別室で指導するから。」 とだけ言い、 僕は先生の後に従った。 生徒指導室。 僕は過去何回も、 ここに呼ばれたことがあったから、 それほど大きな発作を起こすことは無かった。 先生に向き直り下を向いたまま、 「あの、ぼ、僕、なにかしましたか?」 とだけ聞いた。 先生は、 「なにも。」 とだけ、軽く言った。 じゃあ、なぜ・・・ そう言おうとした瞬間、 先生が僕を抱きよせた。 腰を掴まれ引き寄せられた。 生徒指導室の窓はカーテンが敷かれていた。 他の人を呼ぶことも出来ず、 僕は身をよじるように、 先生から離れようとした。 だけど先生の力は強く・・・ 「君・・・いつもしんどそうな顔してるね。だけど、そんな君のことが気になってね。」
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