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先生は僕を抱きながら真摯な声で言った。
僕は何も言えず・・・
「君は美しい。それを君は分かってないだろう?君はもっと自分に自信を持っていいと思うよ。」
それらしいことは言っているが、
つまりは僕のこと、
思い通りにしたいってことでしょ。
僕が美しいなんて、
嘘だ。
先生の腕を振り絞り、
僕は逃げた。
ああ、
彼のことが、
彼の元に行きたい。
どんっと、
誰かにぶつかった。
生徒指導室を慌てて出て来て、
走って逃げて、
一目散だった僕。
「大丈夫?」
彼だった。
僕の唯一の、
心のよりどころ。
彼の胸にすがった。
涙が後から後から湧き出る。
彼は優しく僕の肩を抱き締め、
なにも言わず、
僕の事をぎゅっと抱き締めていてくれた。
ああ、
落ち着いていく。
僕の心、
哀れみでもいい。
彼に、
彼に届きたい。
少しでも近くに行きたい。
僕は、
彼にしがみついていた。
いつもなら、
こんなこと、
絶対に出来ない僕が、
彼の前だと正直で居られる。
不思議と、
思いをぶっつけられる。
「どうしたの?大丈夫?」
彼が聞く。
でも僕は応えず・・・
彼にしがみついた。
そうしたら彼は、
僕を強く強く抱き締めてくれた。
他の友達が呼んでいたけれど、
それも無視して、
僕のことだけを考えてくれていた。
ああ、
僕の居場所、
ここにあるの?
僕はことさらに、
甘い誘惑に誘われていた。
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