82人が本棚に入れています
本棚に追加
紫陽花、
梅雨の時期に咲き誇る可愛い花、
この花を見ると僕は、
ああ今年も梅雨が来たんだな、と感じる。
うっとうしい梅雨だけど、
僕は、
結構好きなんだ。
傘を差して、
一人で居るのを隠すことが出来る。
他人との接触を避けることが出来る。
傘一本で、
周りの視界が変わって見えるんだ。
僕は、
ただ一人、
友達は居ない。
彼女ももちろん居ない。
19歳、
大学生。
なにか目的があってこの大学に入ったのでは無く、
僕の入れる大学がここしか無かったってだけのこと。
働くことも視野に入れたけど、
今の僕には難しかった。
働くってことは、
人との関わりを持つこと。
今の僕にはそれは無理だ。
一人が心地いい。
誰にも侵されない僕だけの空間。
親は、
そんな僕を疎み、
一人暮らしをさせてくれた。
だから僕は、
いつも一人で居られたんだ。
女の子には興味は無い。
かといって男に興味があるわけじゃない。
誰にも興味が持てない。
誰とも関わりたく無い。
ひっそりと、
一人、
夜空に浮かぶ月のように、
静かに生きていたい。
僕は夜空の月を見るのが好きだった。
月は、
まるで僕のようで、
僕は毎晩、
カフェインレスのコーヒーを飲みながら、
月を眺めた。
最初のコメントを投稿しよう!