キスの意味

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初めて入る彼の部屋・・・ 僕は緊張していた。 几帳面に片付けられた部屋。 中央にはセミダブルのベッドと、 壁際には、 机があり、 ステレオが飾られ、 僕の殺風景な部屋とは段違いだった。 「いい部屋だね・・・」 素直な感想を言った。 そしたら、 いきなり、 抱き締められた。 後ろから・・・ 僕は焦る・・・ ドキドキしていた。 「要・・・好き・・・」 彼は酔っている。 彼の腕を引き剥がしながら、 彼の方を向いた。 とろんとした彼の瞳。 「酔ってるでしょ。」 僕は思いの他冷静で居られた。 「うん、酔ってる。じゃないと、要、させてくれないでしょ。」 さ、させるって、何を・・・ 僕が焦っていると・・・ 「お風呂、一緒にはいろ。」 ここでは風呂は一つ。 順番に入ることになっていた。 彼の番は、 一番最後・・・ それまでに寝ちゃうんじゃないか・・・ そう思えるほど、 彼は酔っていた。 彼の部屋にはソファがあって、 そこに二人で座った。 僕に絡みついてくる腕と足・・・ 僕は抵抗出来ずに居た。 彼の吐息・・・ 彼の匂い・・・ 紫陽花のいい匂いがした。 どうりで・・・ 彼の部屋には、 紫陽花の鉢植えが置いてあった。 誰が置いたんだろう・・・ 彼が自分で置いたとは思えない。 彼が、 僕の首筋に噛みついた。 「い、イタッ。」 僕はそれでも彼のことを、 振りほどくことが出来ずに居た。 キスが・・・ 繰り返される。 啄むようなキス・・・ 徐々に深い深いキスになる。 舌が絡め取られる。 息づかいが、 苦しくなる。 「要がここに来てくれて俺嬉しい・・・」 酔っているはずの彼が、 それは本心? このキスの意味? キスが長く続く。 僕らは、 夢中になって、 お互いを求めていた。 僕は本当に幸福だった。 窓を仰ぐと、 孤独な月が、 僕達を見守っていた。
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