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「窓が!窓が割れる!外気が入る。もう、もうダメだ」
有川さんの絶望的なうめきの後、電話口には、泣き叫ぶような声が響き渡ったのです。
「目だ!窓から目が見える!
真っ白な・・・」
のどをゴクンと鳴らす重い音の後・・・
「氷の目だ!」
そのまま電話は切れ、二度と連絡はとれませんでした。
岐阜県気象台から連絡を受けた啓丹線野庭駅前の交番巡査は、直ちに現場に急行しました。
深夜にパトカーのサイレンが鳴り響きます。
断崖に面した道路を走り、途中からは徒歩で谷底の村まで向かいます。
村はいつも通りの熱帯夜でした。
さいはての森は、熱苦しい空気に覆われていました。
そして観測所の中では、失神した有川さんが横たわっていました。、
すぐに救急車が呼ばれ、有川さんは無事救出されました。
一体、この夜、なにがあったのか?
有川さん本人は、よほどのショックを受けたのか、一切の記憶が抜け落ちていました。
七月二十六日の深夜になにが起こったのか?
それを知るには、あと三日の猶予が必要だったのです。
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