さっちゃんへの手紙

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 <彩月ちゃん  お久しぶりです。  七月二十六日に、僕、お墓参りに行きます。  その前に、さっちゃん宛の手紙を送ります。  「この手紙をお墓に置いてきてください」 って、おばさんにお願いしました。僕が着いた日には、きっと読み終わっていることと思います。  さっちゃん。  ずっと忘れたことありません。  近所に住んでて、小さなときから一緒だったもん。  僕、泣き虫で弱虫だった。いじめられたら、すぐさっちゃんのとこに飛んでった。  二歳上のさっちゃんがいつも守ってくれた。  いじめられたと話せば、すぐさっちゃんが仕返ししてくれた・・・  さっちゃん、スポーツできるし、背も高くて強かったから、男の子だってかなわなかった。  いつだって僕、さっちゃんの後ろにいればよかった。  いつだってさっちゃんと一緒に学校に行って一緒に帰った。  いつだって一緒に遊んで、どこかへ行くときだって一緒だった。  さっちゃんが小学六年のとき、両方の家で相談して、ぼくたち「婚約」したんだよね。    ずっと・・・  ずっと・・・  一緒にいたかったから。  僕たちその証拠が欲しかったんだ。  両親だって、  「まだ子どもなんだから、イヤになったらやめればいいし」 って賛成してくれた。  それくらい僕ら、仲良かったもん。  なのにさっちゃんたらね。  すぐ後で、こわい目をして言ったんだよ。  「お父さんの実家、雪女の子孫って言われてるんだ」  僕の肩に手を置いて、こわい目を近づけてきた。  「もし裏切ったらね。  わたし雪女になって、ユウちゃんのこと氷にするから。  分かった?」  さっちゃんが雪女になって、僕のこと凍らせる姿、想像した。  すっごくこわくなって泣いちゃった。  そしたら笑って手をつないでくれたけど・・・  僕、まだ泣いてたから本買ってくれたよね。
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