白雪村の怪奇事件

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白雪村の怪奇事件

 夏が来れば、岐阜県飛騨金山市白雪村(はくせつむら)のニュースが新聞、テレビをにぎわせます。  谷間にある人口四百人足らずの白雪村。  冬は大雪が続き、夏ともなれば、度々、気温が四十度を超えるのです。  気象状況が村人の安全に関わることから、この村には有人の気象観測所が設置されています。  白雪村気象観測所は村はずれ。さいはての森と呼ばれる森林地帯にあります。  七月二十六日の深夜零時前後。  コンクリートでつくられたはずの気象観測所に、ある異変が起きていたのです。  深夜、岐阜県気象台の職員が、観測所の職員からの緊急の電話を受けとったのです。  「白雪村気象観測所の有川です。  異常事態です。気温が急降下しています。  氷点下二十度。二十一度。どんどん下がっています。  氷点下二十五度。  森が氷と雪に覆われ、ものすごい吹雪です。  窓ガラスを吹雪が打ちつけてくる。 エアコンがまったく効かない。」  「こちら岐阜気象台の松山洋介です。至急、気象用カメラの映像を送信してください」  「寒さで全機故障です」  「今、白雪村の気象観測データを見ていますが、とても信じられません。 これも観測機器の故障じゃないのですか? だいたい、いま何月だと思ってるんですか。  今日の白雪村の最高気温は四十・三度‼︎   四十・三度ですよ」  「あんた!何言ってるんだ。ものすごく寒いんだ‼︎  体が・・・体がカチンカチンに凍ってきた‼︎  氷漬けだ‼︎ 観測所が氷になる!」  「有川さん!落ち着いてください」
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