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さっちゃんへの手紙
瀬戸君は、窓際の席に着きました。
窓の外に目を向けることもありません。そっとスマホを取り出しました。
ロック画面。
ブレザーの制服姿の瀬戸君。そしてブレザーの制服を着たセミロングの少女が並んでいます。
少女は明るい笑顔を浮かべ、スマホを手にした瀬戸君を見つめています。
「うん。行ってくるといい。ちゃんとけじめつけようね」
瀬戸君の心に、スマホの画面から、やさしい声が聞こえてきます。
「ユウは強くなったよ。
安心してって、彩月に報告して。
わたしたちのことだってちゃんと・・・」
瀬戸君は、しばらくスマホの画面を見つめていました。
それからスマホを待ち受け画面にして、保存している写真を呼び出しました。
ショートカットに大きなパッチリした目。背の高い少女が、瀬戸君と並んでいました。
何年か前の写真でしょう。
瀬戸君はランドセルを背負い、背の高い少女はブレザーの学生服を着ていました。
まっ白な脚に、黒いハイソックスがよく似合いました。
中学生くらいでしょう。
数日前でした。
瀬戸君は、この少女に宛てて手紙を書いたのです。
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