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「千里」 入学式もホームルームも終わって、教室で帰りの準備をしていると、涼介が声をかけて来た。 「母さんたちが、帰りに肉買ってこいって。今夜のBBQの」 「あ、両家合同のやつ?」 私たち家族は隣だから、両親たちも仲がいい。今日は合同で私と涼介の入学祝いをすることになっていたんだった。 「あの、ごめん。私友達とお茶して帰る約束して。頼んでいい?」 奈央と、帰りに少しお茶していこうと約束していた。涼介はふぅんとつぶやいた。 「……しょうがねぇな、俺がやっとくよ。千里、友達できたんだ」 「うん、奈央っていうの」 私が紹介しようとすると、奈央はもうそばにやって来ていた。 「初めましてー、島袋奈央です」 小首をかしげて奈央がほほ笑むと、巻き毛が肩から落ちてきてきれいだった。 「あ、どうも。城屋です」 涼介は無表情に返すと、私に「BBQの時間には遅れんなよ」と言うとさっさと自分の席へ戻っていった。 クラスメイトなんだから愛想よくしなよ、とがっくりする。 「気にしないでね、元々ああいう不愛想な子だからさ」 奈央に言うと、奈央はにやにやと涼介の背中を見たまま言った。 「ねぇねぇ、あの子、千里のなんなの?」 「なにって、別に。隣の家に住んでるだけの、幼なじみだよ」 「へぇ。幼なじみかぁ。仲良さそうだね」 「そんなことないよ、家族同士が仲いいだけで、私たち同士は全然。けんかばっかだよ」 「ふうん」 奈央は、まだにやにやと涼介を見ていた。
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