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「涼介くんは、最初から好きな子がいるって言ってた。だからデートとかはできないって。でも、実ることはなさそうだって聞いたから、私がどうしても、一回でいいからって頼んだの」
「そうだったんだ」
「そしたら、その間に好きになってくれるかなって思った。でもだめだった」
莉乃ちゃんは、今度こそ泣き出した。私はいそいでハンカチを差し出す。
「でもね、いつか涼介が言ってたよ。一緒にいる限りは、その子を大事にしたいって。だから、莉乃ちゃんといる間は、ちゃんと莉乃ちゃんのこと大事に思ってたんじゃないかな」
あの時、涼介にはかなわないなと思ったんだ。目の前の人をちゃんと見ること。好きな人の幸せを願うこと。
本当は、涼介に好かれたら、どれだけ幸せなんだろうって少し思った。
「そうだね、そうだと思う。デート中、本当に優しかったから。でもやっぱり好きにはなれなくてごめんってことわられちゃったの」
「そっか」
「その好きな子って、千里ちゃんのことだと思うの」
莉乃ちゃんはびっくりするようなことを言う。
「えぇ? だから私はただの幼なじみだってあんなに言って……」
「ううん。千里ちゃんだよ、絶対に」
莉乃ちゃんは断言する。
「いつか、ダブルデートしたとき、千里ちゃんが途中で帰ったでしょ。あのとき、涼介くん、ほっとしたような残念そうな、すごく切なそうな顔してた。あんな顔、私にしてくれたことはないよ。他の子にだって、してない」
莉乃ちゃんは、涼介を好きだったからこそ、わかるのかもしれなかった。
でも、涼介が私を好きって。本当かな……。
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