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 放課後の文化祭準備も終わって、大半の生徒が帰ってしんとした校舎の中に、運動部のランニングの声や、吹奏楽の練習の音だけ時々響いて来る。    奈央はずっと元気がなくて、先に帰ってしまったみたい。私は一人で靴箱へと向かっていた。そのとき、帰ったはずの奈央の声が聞こえて来た。思わず、身を隠す。 「私、ずっと好きだったの」  奈央が泣きながら話している。奈央、誰かに告白したの?    だれかがそっと抱きしめたのが見えた。一歩踏み出してのぞくと、相手が見えた。 「涼介?」  私は小さくつぶやいた。  足ががくがくしてくる。奈央、涼介のことが好きだったの? 全然、気が付かなかった。  涼介も、その気持ちにこたえるの?  涼介が好きだって子は、奈央のことだったのかな。そっか。  自分だと思ったのは、勘違いだったんだ!    すごく恥ずかしくて、そしてみじめな気分になった。全部私の勘違い。
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