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私は靴箱からそっと離れて、教室に戻った。誰もいなくなった教室で、窓からグラウンドを見下ろす。
奈央と涼介が、並んで帰って行くのが見えた。胸がつぶれてしまいそうに苦しい。
さっきまで、涼介に言おうと思っていた勇気が、急にしぼんでいく。
もし、涼介が奈央のことを好きで、奈央も涼介のことが好きなら。私がそこに入って行っていいことなんてひとつもない。
自分の気持ちに、やっとやっと気が付いたのに。素直になろうって思えたのに。
もう、その気持ちにふたをしないといけなかった。
そういえば、奈央はずっと、私と涼介の仲を気にしていた。あれは、きっと奈央が涼介のことを好きだったからなんだ。どうして気が付いてあげられなかったんだろう。
自分の頭を軽くたたく。奈央が元気ないのは、そういうことだったんだ。
どうして私は、大切なことに気が付くのが、いつもいつも遅いんだろう。本当に嫌になる。
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