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下を向いたまま玄関を出る。 「千里、一緒に行こう」  家の前で涼介に声をかけられてしまった。どうして会っちゃうんだろう。  今、涼介の顔見たくないのに。肩がふるえた。 「い、いいけど」  実行委員の私たちは、文化祭当日のミーティングがあるので登校時間がみんなより早めだった。涼介と家の前で会ってしまうかもなんて分かり切っていたのに。  ううん。よくよく考えると、心のどこかで、一緒に登校できないかなって楽しみにしていた。少しでも涼介といたい。  この期に及んでまでも、そんなことを思ってしまう。 「やっぱり、千里元気ないな。昨日も遅くまで部屋の電気ついてただろ? 寝れてないの」  眠れないこと、気づかれてる? 無理に明るくふるまった。 「そんなことないよ。やっと文化祭だと思うと楽しみで眠くならなかっただけ! みんなで協力してきたし楽しみだね」 「あ、あぁ。大丈夫ならいいけど……」 涼介は私の方をじっと見てから、やっと目をそらした。 「そういえば、爽にいもうちのクラスくるって」 「そうなんだ、楽しみだね」  たわいない話をしながら、私たちは学校まで歩いた。こうやって、涼介と並ぶのももうやめないと。  奈央のためには、私が涼介を好きって気持ちを持ってる限り、こんなことしてちゃいけない。    今日で最後だ。涼介の横顔を見ると、いつものように無表情だった。  二人で並んで歩く道が、ずっと続けばいいのに。  でも実際は、あっという間に学校についてしまった。
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