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「そういうことじゃなくてさ。もう無理でしょ。遅いもん」  なぜか奈央はいらいらしている様子でそう言った。 「無理じゃないよ、遅いなんてないよ」  私のことなんて気にしなくていいのに。 「どうしてそんなこと言うの?」  奈央は泣きだしてしまった。いつも強気な子なのに……。  私はただおろおろしてしまうばかり。どうして奈央が泣いているのか分からなかった。 「千里。あれ、何してんの」  涼介が廊下に私を呼びにきて、奈央が泣いているのに気が付いた。 「何かあったの?」 「私が、嫌なこと言っちゃった……みたいで」 「ったく。何やってんの」  涼介に怒られて、一気に気持ちが沈んだ。 「おー、お前ら準備中?」  その後ろから声をかけて来た人がいる。爽にいちゃんだった。 「あ、爽にいちゃん」 「先輩だろー」  にこりと笑って、そして奈央に爽にいちゃんは目を向けた。 「どうした? 島袋、大丈夫?」  奈央は「な、なんでもありません」と急に真っ赤になって、どこかへ走って行く。  それを見て、涼介は「あーあ」とため息をついた。 「どうしたんだろ、島袋」  爽にいちゃんは心配そうに奈央が走って行った方を見た。 「何でもない。爽にいにはどうしようもないこと」  淡々と涼介は答える。 「じゃ、涼介に任せていいの? 生徒会の大事な後輩なんだけど」 「任せられても、俺にもどうもできないからな。千里、言ってやれよ」 「っえ。私?」  てっきり涼介が追いかけるんだと思っていたから、驚いた。 「千里が一番、気持ちわかるはずなんだ。島袋のやつ、遠慮して、千里には言わないっていうけど」
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