10

6/15

27人が本棚に入れています
本棚に追加
/182ページ
「だからさ、奈央、涼介のことが好きだったんでしょ」  ハンカチを出して渡す。奈央は「ありがと」と涙を拭いた。 「でもさ全然、勘違いですから」 「勘違い? えっ」 「私が好きなのは、生徒会長……」 「ええっ」 「最初から言ってるでしょう」  爽にいちゃんのこと、ふざけて「狙う」って言ってたのかと思ったけど、本気だったんだ。 「じょうだんかと思ってた、ただの憧れみたいな感じで」 「本当に好き。でも千里が好きだって言ってたからさ、本気っぽくは言えなくて」 「そうだったの……。気づけなくて、ごめん」  生徒会まで入ったのも、本気で爽にいちゃんに近づきたかったからなんだ。 「でも、千里は違う人が好きだって気が付いたんでしょ、やっぱり」  奈央がいつものように笑った。久しぶりに見た笑顔にほっとする。 「あ、うん。奈央はお見通しだったんだね」 「ほらー。私、最初からそう言ってたじゃん。千里には、生徒会長よりあの人だよって」  いたずらっぽく奈央が笑う。すっかり涙が渇いたみたいで安心した。 「そうだよね。私いつも間違って。さっきまで、奈央は、その、涼介のことを好きだって勘違いしてたの」 「それで、城屋くんと一緒に回れなんていったの? もー」  奈央がぱちんと私の肩を叩く。 「城屋くんは、私が元気ないのに気が付いて話を聞いてくれただけ。会長の弟だからかな、言いやすかった」  好きなの、って言っていたのは、爽にいちゃんを好きだと涼介に打ち明けていただけだったんだ。なんだ。 「それで城屋くんが、私のことなぐさめてくれたってだけ。ああ見えて優しいところあるよね、彼」
/182ページ

最初のコメントを投稿しよう!

27人が本棚に入れています
本棚に追加