27人が本棚に入れています
本棚に追加
/182ページ
「だからさ、奈央、涼介のことが好きだったんでしょ」
ハンカチを出して渡す。奈央は「ありがと」と涙を拭いた。
「でもさ全然、勘違いですから」
「勘違い? えっ」
「私が好きなのは、生徒会長……」
「ええっ」
「最初から言ってるでしょう」
爽にいちゃんのこと、ふざけて「狙う」って言ってたのかと思ったけど、本気だったんだ。
「じょうだんかと思ってた、ただの憧れみたいな感じで」
「本当に好き。でも千里が好きだって言ってたからさ、本気っぽくは言えなくて」
「そうだったの……。気づけなくて、ごめん」
生徒会まで入ったのも、本気で爽にいちゃんに近づきたかったからなんだ。
「でも、千里は違う人が好きだって気が付いたんでしょ、やっぱり」
奈央がいつものように笑った。久しぶりに見た笑顔にほっとする。
「あ、うん。奈央はお見通しだったんだね」
「ほらー。私、最初からそう言ってたじゃん。千里には、生徒会長よりあの人だよって」
いたずらっぽく奈央が笑う。すっかり涙が渇いたみたいで安心した。
「そうだよね。私いつも間違って。さっきまで、奈央は、その、涼介のことを好きだって勘違いしてたの」
「それで、城屋くんと一緒に回れなんていったの? もー」
奈央がぱちんと私の肩を叩く。
「城屋くんは、私が元気ないのに気が付いて話を聞いてくれただけ。会長の弟だからかな、言いやすかった」
好きなの、って言っていたのは、爽にいちゃんを好きだと涼介に打ち明けていただけだったんだ。なんだ。
「それで城屋くんが、私のことなぐさめてくれたってだけ。ああ見えて優しいところあるよね、彼」
最初のコメントを投稿しよう!