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奈央はハンカチをしまいながら続けた。
「もしかして、私に気を使って、城屋くんをあきらめようとした? 遠慮なんてしちゃだめでしょ。本当に好きなら、ぶつからないと」
「私に遠慮してた、奈央に言われたくありませんー」
「だって、千里は本当のライバルじゃないって分かってたもん。千里は会長のことを本当に好きなわけじゃないって、最初から、分かってた。だけど、私は私で、会長に本気でぶつかっていく勇気がなかったの」
みるみる、奈央の目がまた潤んでいく。
「あー。また、涙が……。泣かないで」
焦ると、今度はすぐに笑ってくれた。
「ごめん。大丈夫」
「爽にいちゃんが留学しちゃうから元気なかったんだね」
「うん。卒業までには、私も生徒会メンバーとしてもっとしっかりして、そしたら気持ちを伝えたいなって思ってたけど、いなくなるの早すぎるよね」
「まだ、間に合うよ。伝えないと。今の奈央のままで、いいんだよ」
「そうかな。私になんてできるかな。」
「奈央なら、できるよ」
「そういう千里は? 城屋くんに、好きだって伝えないの」
「ちゃんと伝える。後悔したくないから」
「わかった。じゃあお互いがんばろうよ」
私たちは、二人で笑い合った。奈央の気持ちが、爽にいちゃんに伝わればいいなと思う。
そして私も。
今の私のままでいい。
本当に好きな人に、ちゃんと気持ちを伝えたい。
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