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「わぁ、混んでるね」
「夏休みだからな」
次の日、私たちは空港にやって来た。爽にいちゃんが荷物を預けているのを、涼介と並んで見守る。
私たちの間には、まだよそよそしい距離があった。
この機会に、頑張って誘ってみようかな。せっかくの夏休み、どこか遊びに行きたいもん。
「あ、あのさ涼介、夏休み中どこかに……」
言いかけて顔をあげると、涼介はふらりとどこかへ行ってしまっていた。
残念……。こんなので、デートなんてできるのかな。
「見送りありがとうね、千里ちゃん」
「爽にいちゃん、荷物預け終わったんだね」
「うん、なんとか。あれ、涼介は?」
私は首をふった。
「どこか行っちゃった。なんかね、涼介とうまくいくのか不安になってきた」
すると、爽にいちゃんはくすくす笑った。
「そんなこと心配してるの? 大丈夫だよ。これまでだって一緒だったんだから。二人、ちゃんとお似合いだよ」
「お似合いって」
両手で頬をおおった。あらためてそんなこと言われると、恥ずかしい。
「涼介、ずっと千里ちゃんのことが好きだったんだよ。でも、千里ちゃんが俺のことを好きって言ってたから、遠慮してたんだ」
爽にいちゃんは、私の頭をぽんとなでた。
「涼介はいつも千里ちゃんのことを一番に思っているよ。だからさ、自信持ってよ」
そうだよね。涼介は、そのままの私でいいって言ってくれたんだ。
今さら飾る必要なんてない、そのままぶつかっていけば、きっと受け止めてくれる。
「ありがとう、爽にいちゃん」
「涼介のこと、よろしくね」
にやっと言われて、私は顔が赤くなった。
爽にいちゃんと笑っていると、「先輩!」と誰かが走って来た。
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