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「何一人でたそがれてんの」
空港内の屋上で涼介は飛行場を眺めていた。
「別にぃ」
涼介の顔はいつもの無表情だけど、本当はさみしいんだろう。
「そう? 落ち込んでない?」
「千里こそ、大丈夫なの」
何が、と聞きかけて、爽にいちゃんがいなくなることだと思い当たった。正直なところ、爽にいちゃんがいなくなるさみしさを感じるより、今は涼介のことを心配する気持ちの方が大きかった。
「うん。だって私には涼介がいるもん」
「そっか」
涼介は、少しだけ笑った。飛行機が飛び立っていくところが見える。
ゆるやかな風が吹いて来る。急に、小さいころのを思い出した。爽にいちゃんに告白して、相手にされなくて。
早く大人になりたいと泣いていたとき。
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