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爽にいちゃんに好きだと言ったあと、私は泣くのを我慢した。爽にいちゃんの前で泣いたら、子どもだって認めたようなものだから。
だけど、一人になるとこらえた涙がぽろぽろ止まらなかった。
私は近所の川辺に座って一人で泣いていた。そのとき、涼介が私のことを見つけてくれたんだ。
「千里、どうしたの? 泣いているの?」
「だって、爽にいちゃんのこと好きなのに、いつまでも追いつけないから」
まだ小学生だったけど、早く大人になりたくて仕方なかった。
ぐしゅぐしゅと顔をぬぐう私の隣に、涼介がそっと座った。
「千里は、そのままでいいのに」
涼介はそうつぶやいた。
そうだ、あのときから、涼介はそのままの私を見てくれていたんだ。あのときも、こうして風が吹いていた。
涼介はずっと、私が泣いたらなぐさめて、私の幸せを思ってくれて。そっと見守ってくれていたんだ。
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