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ごそごそと涼介はズボンのポケットをさぐると、きらりと光るものを取り出し、私に差し出した。 「これって……?」 「空港ぶらぶらしてたら、お土産屋さんがあってさ。千里に似合いそうだったから」  私に手渡してくれる。水色の小さな石がついた可愛いネックレス。 「私にくれるの? ありがとう」  ネックレスなんて誰かにもらうなんて初めてで、ちょっと感動してしまった。  その相手が涼介だっていうのが、なんかおかしいけど。 「私に、こんなの似合うかなぁ」  これまで、顔が子どもっぽい私には、アクセサリーは似合わないと思ってつけたことがない。 「千里に似合いそうなの探したんだ」  手のひらにのせて眺めてみると、確かに控えめのデザインだから私でも無理なくつけられそうだった。  それに、涼介が私のことを思い浮かべて選んでくれたのが、特別な感じがして嬉しい。  デートも何もできていないなんて、落ち込んでいたのが急にばかばかしくなった。  だって涼介は、不器用ながらこうやって私のことを大切にしてくれてる。それがよく伝わってくる。 「ありがとっ」    思わず涼介に抱き着いた。 「っ……、別にぃ」  涼介はいつものように無愛想に答える。だけど、ほんのり頬が赤くなっているのがわかった。また、ちょっと可愛いと思ってしまう。 「つけてあげるな」  涼介が私の背中側にまわり、ネックレスをつけてくれる。首元が少しくすぐったい。  その感触に、高校の入学式を思い出した。涼介がネクタイを直してくれたとき、あのときもくすぐったかったっけ。  だけど今は、それにドキドキが加わっているような気がする。 「ほら、やっぱり似合う」  前に回り込んで来て、涼介が私を見た。 「そうかな? ありがとう」  私は首元に手を置いた。よく考えたら、爽にいちゃんを好きだと思っていたときから、涼介にはどきりとさせられることが時々あった。  勉強合宿の日、机の下でくっついたこと。窓を伝って部屋まで涼介が来たときのこと。  いつも、私のこと励ましてくれて、助けてくれて。私のこと、誰より分かってくれてたのは涼介だったような気がする。  化粧を似合わないと言われて悲しかったのも、相手が涼介だからだし、逆にこうやって何かが似合う褒められて嬉しいのも、涼介だから。  それって、もしかして私もずっと前から涼介を意識してたってこと?
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