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「千里ー!」
奈央が、爽にいちゃんと並んで手をふっている。
「どこ行ってたの。もう出発なのに」
「二人のお邪魔かと思ってさ」
「千里だって、涼介くんと楽しく過ごしてたんでしょ?」
奈央が照れ隠しに、ぷりぷり怒った。それを見て、私も爽にいちゃんも笑う。
あとから涼介もやっと追いついて来た。
「爽にい、じゃあね」
「じゃあな、涼介」
爽にいちゃんと涼介、似ていない兄弟はお互いに握手をかわした。
こうして見ていると、正反対だと思っていた二人は、やっぱりどことなく似ている。
笑うと細くなる目とか、すっとした鼻とか。
それに、優しいところも。爽にいちゃんは分かりやすい優しさで、涼介のは、少し分かりにくい優しさ。
だけどそのどっちにも、私は助けられた。
「涼介も、元気でいろよ」
爽にいちゃんが涼介の頭をぽんとなでた。いつも無表情の涼介も、さすがに少しさみしそうな目をしている。
「涼介さみしいんだ」
私がからかうと、「うるせぇな」と睨まれてしまった。
でも今は、そんな目つきの悪さも、照れ隠しだってちゃんと分かる。
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