27人が本棚に入れています
本棚に追加
/182ページ
「ほんとうごめん。ちょっと約束あるんだよね」
私に向かってそう言いながら、爽にいちゃんはもう庭から出て道路の方へと歩き出している。
「ま、待って」
爽にいちゃんを追いかけた。他に追いかけてくる家族たちはいなくて、必然的に、二人切りになる。家の前の街灯が、ちょうど点灯して、私たちを照らし出した。
ここまでは、家族の声もあまり聞こえてこない。ということは、こっちの声も家族たちには聞こえないってことだ。
私はドキドキしながらも、思い切って言った。
「ねぇ、私、高校生になったよ」
爽にいちゃんは、きょとんとした顔でこちらを見つめる。暗い中で見ると、爽にいちゃんの顔はいっそう大人っぽくみえた。
「うん。知ってるよ。だからお祝い渡したんだ。本当におめでとう」
「だからね」
じれったくなって、私は言葉をさえ切った。
すると、爽にいちゃんが中腰になって、その顔を近づけて来た。ふわりといい匂いが香る。大人の男の人の香り。くらくらしてくる。この体勢は、もしかして……。
最初のコメントを投稿しよう!