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「ほんとうごめん。ちょっと約束あるんだよね」  私に向かってそう言いながら、爽にいちゃんはもう庭から出て道路の方へと歩き出している。 「ま、待って」 爽にいちゃんを追いかけた。他に追いかけてくる家族たちはいなくて、必然的に、二人切りになる。家の前の街灯が、ちょうど点灯して、私たちを照らし出した。 ここまでは、家族の声もあまり聞こえてこない。ということは、こっちの声も家族たちには聞こえないってことだ。 私はドキドキしながらも、思い切って言った。 「ねぇ、私、高校生になったよ」  爽にいちゃんは、きょとんとした顔でこちらを見つめる。暗い中で見ると、爽にいちゃんの顔はいっそう大人っぽくみえた。 「うん。知ってるよ。だからお祝い渡したんだ。本当におめでとう」 「だからね」  じれったくなって、私は言葉をさえ切った。 すると、爽にいちゃんが中腰になって、その顔を近づけて来た。ふわりといい匂いが香る。大人の男の人の香り。くらくらしてくる。この体勢は、もしかして……。
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