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――それだけ?
うす暗い道のはしっこで、ぼうぜんとつぶやく。
私は、ずっとずっとこの日を待ってた。高校生になって、爽にいちゃんと同じ制服を、自分も着る日を。だってそしたら大人で、爽にいちゃんに認めてもらえると思ってたから。
それなのに、まだ子ども扱いなの……。
「おい、どうしたんだよ。肉なくなるぞ」
涼介が呼びに来た。振り返ると、涼介は一瞬ぎょっとしたように身をすくめた。
「千里、もしかして泣いてる?」
「泣いてないっ」
いつの間にか、涼介の言う通り涙が流れていた。涼介はこっちに近づいて来ると、頬を触った。
「やっぱ泣いてる……」
涼介の手はあたたかい。小さいこどもみたいに。黙っていると、涼介ははっとしたように言った。
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