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 じっと奈央の姿を見つめていると、「な、なに」と奈央が後ずさった。 「そうだ! 奈央、私に協力して!」 「え、協力? 何を?」 「大人っぽくなる方法を教えて!」 「何それ。大人っぽくなる方法?」  奈央はのけぞったままだ。 「うん! あのね、例えば……。そのお化粧とか!」  私は奈央の顔を指さす。 「化粧? そんなの簡単だよ。じゃあ今度は一緒に買い物いこっか」 「やったぁ、ありがと」  私は思わず奈央に抱きついた。 「きゃあ、辞めなさいっ」 「いいじゃんー。奈央ありがとう、大好きっ」 ほんと、この子と気まずくならなくてよかった。 「はーいいな。楽しそうで。私も早く好きな人見つけたいなぁ」 奈央は私に抱きつかれたまま、そうつぶやいた。 「好きな人か。誰かいたらいいね。あ、涼介とかは?」  適当に私が涼介の名前を出すと、奈央はぷっと笑った。 「千里って、何にも意識してないんだね」  意味が分からなかった。 「どういうこと?」 「先輩とのこと応援してあげたいのはやまやまだけど。あのね、私、千里には涼介くんだと思うよ」  奈央の言いたいことがよく分からずに、私は黙ってしまった。私には、涼介ってどういう意味? 「なんで。どうして涼介なの? だから涼介はただの幼なじみで、仲も悪いって」 「ま、わかんないならいいよ。その内ね」  奈央は私の言葉を遮って、「じゃあまた学校でね! 買い物は放課後にでも」と帰っていってしまった。 どうして奈央は何度も涼介と私をくっつけたがるんだろう。私は玄関前で、ずっと考えていた。だけど、ぴんとこないままだった。
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