4/15
前へ
/182ページ
次へ
 カラオケに入って、それぞれフリードリンクを取りに行ったとき、やっと涼介が声をかけてきた。 「何、その顔」 「え?」   そういえば、化粧をしたままだったんだ。ちょっと恥ずかしい。思わず顔に手をやる。 「どうかな……?」  いつも子どもっぽいってバカにしてくる涼介。でも今日は褒めてくれるかもしれない。 「変。似合わない」  涼介はばっさりそう言うと、さっさと部屋に戻ろうとする。 「何なの、その言い方」 むかついて、背中に向かってストローの袋を投げつけた。涼介はちょっと振り返って、ひらひらと舞い落ちた袋を拾うと、ため息をついて、何も言わずに戻っていく。 しばらくしてから、腹が立ったまま部屋に戻ると、涼介はもう席についていた。女の子に囲まれている。 涼介はこっちを見ようともせずに、女の子たちが「何の曲が好き?」と聞くのに笑顔で答えていた。 その子たちだって、化粧してるじゃん。私よりも全然ハデで、仲良くなれそうにないタイプだなと勝手に思う。 それなのに、涼介ってば、でれでれ感じよく振舞っちゃってさ。 涼介は本当は不愛想でいじわるなやつなんだよって、女の子たちにばらしたくなってくる。
/182ページ

最初のコメントを投稿しよう!

27人が本棚に入れています
本棚に追加