27人が本棚に入れています
本棚に追加
「千里。何してたの」
涼介はむすっとした顔で、私を睨んだ。
「別に何も。ドリンク取りに来ただけ」
「まだグラス空じゃん」
言われたとおり、私のグラスはまだ空のままだ。はっとして、ジュースを入れる。オレンジ色の液体がジャワジャワとグラスに注がれていく間も、涼介はそばを離れていこうとしなかった。
「あ、涼介もジュースほしかった?」
聞くと、「ばか、違うよ」と怒られる。
「千里、男にちょっとちやほやされたからって、いい気になるなよ」
涼介はそう続けた。
「え? いい気になんてなってないって」
なんで涼介はわざわざ私につっかかってくるんだろう。クラスの男の子としゃべっていただけで、何でそんなに言われなきゃいけないの。そんなに私のこと嫌いなの?
涼介は怒っているみたいだった。
「千里は全然分かってない。隙がありすぎる」
「何それ。隙なんてない」
「ある。だいたい、千里は爽にいが好きなんじゃなかったのかよ」
「そうだよ」
「だったら、爽にいだけ見てりゃいいんだよ、一生片思いしてろよ!」
「どうして涼介にそんなこと言われなきゃいけないの? 爽にいちゃんとのことだって、私は本気で悩んでるのに、一生片思い、とか。そんなひどいこと」
私は思わず泣き出してしまった。涼介はただ隣で、立ち尽くしているだけで、それ以上は何も言わなかった。
最初のコメントを投稿しよう!