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そのあとはカラオケ中、一度も涼介の方を見なかった。涼介の方も話しかけて来ることなく、何もなかったかのようにみんなと楽しそうに過ごしていて腹が立った。もう絶対涼介とは遊ばない。
「今日は、爽くんたちが夕ご飯食べにくるからねー」
帰宅すると、お母さんにそう言われて、「ええっ」と抗議の声をあげてしまった。
「爽介くんも来るのよ? いつも、爽介くんが来るって聞くと喜ぶくせにどうしたの?」
そりゃあ爽にいちゃんが来るのは嬉しいけど、涼介とは会いたくない。
「なんで急に夕ご飯一緒に食べるの?」
「うちも向こうも、お父さんが出張だからね。それなら二家族で楽しく食べましょってなったのよー。お寿司取るわよ」
家族ぐるみで仲がいいとこういうときに困る。お母さんはうきうきと、出前の電話をかけはじめた。私はため息をつきながら洗面所へ向かった。
はじめてした化粧は、もう涙で崩れてしまっている。こんなんじゃ、爽にいちゃんに見せられない。
クレンジングはまだ持っていないので、お母さんのものを勝手に借りた。
今度買わなきゃ、と思ったけど、もう化粧なんてできないかも、なんて弱気になる。
涼介に似合わないなんてさんざん言われたし。また涙が浮かんできたのを、ごしごしと洗い流した。
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