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高校生になっても、お兄ちゃんの傍にいたいんだねぇ、と私は声には出さずに考えた。少しほほえましい。 涼介は兄である爽ちゃんのことが大好きなのだ。小さいころからいつも爽にいちゃんにべったりで、私と、爽にいちゃんを取り合っていた。 「爽にいちゃん、お帰りなさーい」  まだ小学生の私が中学生の爽にいちゃんに手をふると、隣で私と同じ年の男の子が邪魔をしてくる。手を振ろうと私が伸ばした手を、ぱちんと叩いた。 「俺のにいちゃんなんだから、お前がにいちゃんって言うな!」 と、生意気なことを言っていたのが涼介。今よりも小さくて、ちょっとは可愛かった。でも口が悪いのはこの時からで、いつも私とけんかしていた。 「何すんの!」 「お前が俺のにいちゃん取るから悪いんだ!」  すごい勢いで睨まれて、私は思わず涙ぐむ。 「こらこら、二人ともけんかしない」  爽にいちゃんがやってきて、私たち二人の手を握る。 「二人が仲良くしてなきゃ、俺やだよ?」 「どうして、こいつなんかと」  私たち二人の声が揃って、爽にいちゃんは笑っていた。  思えばこのときから、私と涼介がけんかをしては、爽にいちゃんがそれを見て笑うというのが定番の流れだった。  私は、そんな風に爽にいちゃんに笑われるのがあんまり好きじゃなかった。憧れている人に、子どもだって思われてしまいそうだったから。
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