死を呼ぶ鳴き声

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黒猫だ。 僕の進む先の真ん前で、振り返りながら鳴いた。 エスコートでもしているかのように。 にゃあ。 猫は去っていった。 嫌な予感がする。 しつつも、家に帰るためには進まねばならない。 と、ペダルを漕いでいた。 横から、微かな光が僕の体を照らした。 分かれ道の右から、車が来ていた。ライトが壊れかけているのか光が弱く、気がつくのに遅れてしまった。 慌ててペダルを押し込んだ。 車は避けた。 どうにか自分の命は、助かった。 しかし慌てていた僕は、前方不注意だった。 何かにぶつかった勢いで、自転車から転がり落ちてしまった。 転がった自転車の近くには、黒猫が倒れていた。 轢いてしまったのだ。 猫の首は、あらぬ方向に曲がっていた。 口から血を流しながら、息きれぎれの形相は憎しみに歪んでいた。僕に対する憎しみだ。 どうしてこっちが死ななければならないの、と訴えるように、僕をじっと見つめていた。 そして、声を発した。 まだ終わってないぞ、とでも言いたげに。 にゃあにゃあにゃあにゃあにゃあにゃあにゃあにゃあにゃあにゃあにゃあにゃあにゃあにゃあにゃあにゃあにゃあにゃあにゃあにゃあにゃあにゃあにゃあにゃあにゃあにゃあにゃあにゃあにゃあにゃあにゃあにゃあにゃあにゃあにゃあ————。
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