カフェにて

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「今後のこと、座長と話し合って」 団員10人を数えるのがやっとの小劇団。他の劇団と合同で自主公演をするのがやっとで、切り詰める生活を理由に2~3年でメンバーが入れ替わる。大学のサークルが起源だと聞いたけれど、もう誰もオリジナルメンバーを知らない。 「(りん)ちゃんにはちゃんと話せって言われて」 最古参は、社長息子の座長と今回の受賞で首の皮一枚つながった脚本家。在歴8年。その1年下に、ヒロインの私。 「今回の公演が、うちの劇団にとって最終公演で」 じゃあ、他のメンバーには座長から話をつけるのね。大事なことは伝言なんて、狡い。 「あんなグダグダが最後なんてね、笑える」 せっかく脚本家が賞をとったのだから、記念公演がしたい。誰かが言い出したのを、誰かの地元の公民館を借りることで話が落ち着いた。 「それで、俺は誘われた劇団で脚本を書く」 脚本家には才能があった。10人もの登場人物を器用に動かして90分の劇を作る。シリアス、ミステリー、ラブストーリー。若手登竜門ともいえる賞の大将受賞で、ただ演者がひどくてお客が入らなかったんだと現実を見た。 「座長は会社を継ぐって」 普段はどんな生活を送っているのかわからない。でも、居場所があるのは羨ましいことだ。 「凜ちゃんなんだけど...」 差し出されたのは、スマホの画面。検索時にお世話になる、百科事典だ。 「これがほんとなら、凜ちゃんも俺と来ていいって」 滝本(たきもと)(りん)(子役時代:滝本(たきもと)里香(りか)
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