カフェにて

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滝本里香。本名不明。 6歳で大ヒットドラマのヒロインの子供時代を演じ、その愛らしさで人気に。 主演映画も公開されるなど将来が有望視されていたが、小学校卒業と同時に引退。以後芸能活動は行っていない。 「失礼します」 ウエイターが運んできたのは、2つのかき氷。 頼んだ記憶はない。 「あ、あのっ、西川(にしかわ)翔汰(しょうた)選手ですよね!」 脚本家の興味は、ブルーハワイ色に染まった氷には向かなかった。 「あー...もう選手ではないんですけど」 テーブルの上に置かれた巨大かき氷には、ビビットカラーのラムネが並んでいる。 「でも、甲子園見てましたよ!てっきりプロになるのかと」 もしかしてご実家?なんてテンションを上げる相手に、話を進めることができない。 目の前のスマホで「にしかわしょうた」を検索。あ、ページがあったのか。えっと... ページをスクロールしようとしたところで、盛大に着信音が鳴った。 「あ、すみません」 ページが切り替わっているのには、気づかなかったかもしれない。私の手からスマホをとって、店の外に出た。 にらめっこの相手は、変わったかき氷だけになった。この形は...魚? 「なあ、滝本里香やろ」 降ってきた声に顔を上げると、見覚えのある顔。 「凜って言うた方がいい?」 違う。これは金魚だ。 そして、声の主は 「ああ、お代はいらんよ。試作品やし、この前の金魚分で」
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