灯りの奥に

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「ねぇ、奴さんは」 あ?と振り向くは私の憎からず想うヒト。 「殺したいほど好いている人がいて?」 彼は仏頂面を崩さず言う。 「いない。殺したいだなんて…、他にも表し方があろうて」 あらそう、と私は内心で呟く。そして、 「貴方がいると言ってくれたなら…」 彼は、それきり、 「…せめての救いになったのに」 …………。 動かなくなってしまった。 「ねぇ貴方?」 呼びかけても答えはなく。 「いくら私が赦しても、貴方が貴方を赦せないんじゃ意味はないものね?」 ただ虚ろなる目だけが、そこにはあった。 いつからだろうか。 青白く、穢れ1つなかった我が着物は、始めからそうであったかのように、朱かった
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