間に合うのなら答えて

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間に合うのなら答えて

この世にはとても小さな小さな命があるように、小さな小さな恋もある。 でも、かけがえのない命だと流行りの歌にはこういう歌詞が必ずある。 「誰かが、僕と変わってても誰も困りはしない」 変わりばえのない日々がずっと続いている。 借り物の僕ら椅子を探してる。 きっと、このまま.....何もなれはしないまま心臓は止まっていくのだろう。 はぁ.....ん?あ、かさぶたできてる..... こういうのは、一度引っ張り出すといいんだっけか..... 《ブチッ》 いって!!やばい痒くなってきた..... 『好きだよ』 あぁ、あの二度目の言葉もそろそろ滲んできたなぁ.......... 俺はスマホを手に取り、イヤホンをした。 今、ものすごく悲しい歌が聴きたくなった。 君の好きな音楽ってなんだったかな? 好きな食べ物はなんだったかな? 君の好きな人は俺じゃなかったよな..... 別にそれでいいんだけどな..... そういえば、小さい頃はよく 『誰もわかり合えない!!』とか耳を塞いで嘆いてたっけ? でも、本当は上辺だけだとしても.....愛されていたかったよ..... 何にもなれはしないなら.....ここに、俺が生きていたという形だけでも残しておこう。 俺は何かを成し遂げるフリをしてずっと笑っている。 俺に足りないものはなんだろ..... まぁ、何もなくてもこれでいいか.......... 俺にとって.....午前七時は憂鬱な時間。 あぁ、この時間はもう少し眠らせてほしいな..... そういえば、君の好きな映画はなんだっけ? 好きな言葉はなんて言ってたかな? 今、君が会いたいのは誰なんだろ..... きっとそれは.....俺じゃないんだろうけどな..... 俺には未来がない。誰も俺に期待してない。 俺のそばにはもう、誰もいない。 もう一度、君と笑い合いたい。 誰でも良くない。君に認められたい。 そう思っていた時、君の声がした。 『待ってるよ』 その言葉が聞こえる前はあれこれ諦めていた。 景色の向こう側が滲んできた。 好きな音楽はなんですか? 好きな食べ物はなんですか? 君の好きな人は誰ですか? きっとそれは俺じゃないんだ とか.....自分勝手に諦めていた。独りよがりで傷ついていた。 『歳を取って、やっと気づいたんだね』 もし、まだ、まだ間に合うならもう一度、俺と笑い合って。
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