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「今年のプリンセーザ、最終合格者です」
会議室の机に並べられた履歴書を、老眼鏡片手に眺める髪の薄い男。口にくわえているのはパイプ型のチョコレート。タバコは吸わないのだがオーナーに相応しい風格が欲しくてそうしている。
「174、でかいねぇ。大きいことはいいことだ」
「けど問題が。父親が中国人です」
「それは本人の問題だ。おめえさんもそうだったろ」
「この子も母親がフランスだそうです」
「なんだこりゃ、銅像にケツバットされてやがる」
「地元にドカベンロードってのがあるらしくて」
「こっちの子はえらい光当ててるな」
「大阪じゃ知られた子役で、東京でも芸能活動を続けたいと言ってます」
「おお、この子。あの椿餅は絶品だったな」
「アフロさんが絶句してました、とんでもないパスを何本も出して」
「商売やってる家の子は大人を見る目が肥えてる。足元見られないようにな」
「これが一次のみで合格にした子。ナイフみたいでした」
「研ぎ澄まされたものは折れやすい、心をかけてやんな」
「最後がセミナリオからの昇格組。今年はこの子一人です」
「おまえさんの愛弟子だな、修羅」
「俺は何も」
謙遜でもなんでもなかった。
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