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「御霊谷。おい、御霊谷! お前、先生の話を聞いてるのか!?」
窓外をぼんやり眺めながら考え事に耽っていた実嗣であったが、チョークとともにそんな大声を浴びせられてしまっては、中断せざるを得ない。
「ああ、聞いてるよ。『遺伝子と形質の発現』についての…って…げっ!」
チョーク…ならぬ黒板消しが、怒声とともに飛んでくる。
「馬鹿者! 私が白衣を着ているように見えるのか!? 目を開けたまま眠ってるんじゃない! 生物は前の時間だろう! 今は国語だ、国語!」
言われてみれば、ずいぶん前にチャイムが鳴っていたような気もする。
「お前、国語は苦手なんだから、ちっとは真面目に授業を受けんか!」
眼前の教師の言う通り。
実嗣は大の国語嫌いである。いや、正確に言えば「文章を書くこと」が苦手なのだ。
「俺、別に国語が苦手なわけじゃねえよ」
自分自身、読解力はある方だと思うし、実際のところ、数学などの文章題で点を落としたりしたこともない。だからこれは確かなはずだ。
国語の点が特に伸びないことに原因があるとすれば、恐らく回答中の誤字の多さにおいてだろう。
「そうだな。お前が言う通り、先生も、御霊谷が国語自体が出来ない奴だとは思っとらん。ただ、お前の回答には誤字が多過ぎるんだ」
(そんなこと、今更言われなくても分かってるんだよ)
内心そんな風に思った実嗣であったが、面倒なので口には出さない。
「そうだ! こうしよう!」
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