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 体育会系でもあるまいに、妙に熱血感なこの国語教師は、ポンッと手を打つと、ニヤリと微笑って見せた。 「お前には、事あるごとに文章を書かせるとしよう。文なんてものは、書いてるうちに上達する。誤字だって、その都度正せばきっと減るはずだ!」  よりによって、なんでこいつが担任なのだ、と我が身を呪いたくなった実嗣である。  それに、何が悲しくて、こんな平凡な面構えをした──しかも同性の──教師と文を交わさねばならないのだろうか。 「みんなも協力してくれよ。題して『御霊谷(みくりや)改造大作戦』だ!」  対するクラスメート達は、皆おどおどとこちらを見ているばかり。実嗣は年からいけば一つ先輩なわけだし、筋金入りの「(ワル)」で通っているのだから無理もない。  馬鹿ほど可愛いというのは――学校においては――この国語教師のみが実嗣に対して持っている感情なのかもしれなかった。
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