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悩んだ末に手に取ったのは「チロ&スティッピ」。何だかよく分からないが、叶利好みの妙なキャラが出ているのが決め手だった。
叶利からビデオの入ったカゴを受け取ると、レジに並ぶ実嗣。
結局彼自身は何も借りないらしい。
そこでふと思い出したようにパスケースと、料金を取り出すと、叶利に手渡す実嗣。ついでにカゴも押し付けた。
「……自分で借りろ」
レジ待ちをしていて恥ずかしくなったのだろう。何せ、カゴの中身はキッズ向けのアニメばかり。無理もない。
渡されたパスケースの中にはここの会員証が入っている。
学生証とバスの定期も一緒になってはいるが、カード一枚一枚が半透明なフィルムの中に入っているので、そのままの状態でも十分バーコードは読める。
だから実嗣は、いつも会員証をケースから取り出したりせず、それが入っている箇所を開いて店員に手渡しているのだ。
要は面倒臭がり屋だから。
何度か実嗣と一緒にここへ来たことがある叶利は、そういうのを知っているので何の疑問もなくそれらを受け取った。
実嗣に渡されたパスケースを手にレジに並びながら、会員証が入っている箇所に指を挟んでしおり代わりにすることも忘れない。少しでも早く借りて帰りたかったから。
長身の、頬に傷あり。ついでに髪も染めてます系の男――実際には地毛だが――が借りるにしては余りにもギャップのある作品ばかり。
店員が一瞬叶利とビデオを見比べたが、そんな視線にも気づかない様子で、今か今かと手続きが終わるのを待つ。ある意味幸せな男だ。
そんな叶利を横目に見ながら、思わず溜息の実嗣である。
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