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無事レンタルを終えて店を出ると、先ほどとは打って変わって雨脚が強くなっていた。
「うわぁ~。こりゃ、濡れやすねぇ」
傘を持たずに出てきた叶利は、濡れることを覚悟してそう言う。
「馬鹿。お前が濡れたらビデオも濡れちまうだろ」
しかし、予想に反して実嗣からそんな声がかかり、「ほら」と言って傘が差しかけられたものだから驚いてしまった。
「……でもマスター。それじゃマスターが」
狭い傘に男が二人。
さすがに窮屈すぎてどちらも肩が濡れてしまう。
「ビデオが濡れなきゃいいんだよ」
何だかよく分からないが、そういうことらしい。
「ったく、恥ずかしいモンばっか借りやがって……」
叶利の手にした袋を一瞥して吐き捨てるようにそうつぶやいてから
「……っと。それよか叶利、傘持て。俺がビデオ持つから」
思いついたように付け加える。
どう考えても叶利のほうが長身なので、そのほうが効率がよい。実嗣が、叶利にあわせて傘を差すと、手を思いっきり伸ばしたままにしなければいけないので辛いのだ。
「へい」
言われたとおり、傘を受け取ると、代わりにビデオを手渡す。
「行くぞ」
さっさと歩き始められて、あわてる叶利。
「男と相合傘してるトコなんざ見られたくねぇんだよ」
確かに一理ある。
実嗣にあわせて歩調を速めた叶利は、手にしていたパスケースを落としてしまったことに気が付いていなかった――。
そんな二人のやり取りを、少し離れたところからゴシックロリータの格好をした女の子が二人、キャッキャ言いながら見ていた。
実嗣たちが歩き去った後、顔を見合わせて嬉しそうにパスケースを拾う。
それを開いて学生証を確認すると
「怖そうな目つきの彼、緑風高校の御霊谷実嗣くんって言うんだぁ~」
「もう一人は叶利くんって呼ばれてたよね? 犬耳付けてなかったけど、カナちぃって例の彼だよね?」
「うん! 見間違えるわけないもん。あの二人だよぉ~。何借りたのかなぁ?」
「恥ずかしいものって言ってたから……やっぱり……」
「だよねぇ?」
にんまり笑いながら顔を見合わせる少女達の頭の中には恐ろしい妄想ワールドが繰り広げられていた――。
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