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不審に思って教師を見つめると
「御霊谷、お前が健全な男子だというのは先生も分かってるぞ。分かってるんだがな、まだ……その、こういうところに行くのは早いと思うぞ?」
はぁ?
ますますチンプンカンプンだ。
レンタルビデオショップに行くのなんて何も自分でなくともみんなやってることだろうに。
「どういう意味だよ」
教師の言わんとするところが掴めず混乱する一方の実嗣。
真っ直ぐに担任を見詰めてそう問いかけると、教師は少し周りを気にしてから思い切ったように声を低めて実嗣に耳打ちをした。
「AV倶楽部って……その、アダルトビデオ倶楽部のことなんだろう? これ、届けてくれた女の子二人がお前とカナって子がここで恥ずかしいモンを借りて相合傘して帰って行ったって話してたぞ」
……ち、
……違うっ!
告げられた言葉に一瞬頭が真っ白になる。
そりゃ、小さな店だから眼前のこの男が実嗣御用達のレンタルビデオショップ――オーディオビデオ(Audio Video)倶楽部――の存在を知らなくても仕方ないかな、とは思う。
思うけれど……。
叶利との相合傘を誰かに見られていたことも十分ショックだったが、こういう破廉恥な誤解をされてしまったということのほうがかなりズッシリ圧し掛かってきた。
実嗣は、ここにも自分を誤解している人間がいることを改めて自覚した。
面倒だが、自分の名誉に関わることだ。この誤解だけは解いておかねばなるまい。
End
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