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 日本狼の変化(へんげ)だと豪語(ごうご)する叶利(かなき)は、その言葉の通り、浅黒い肌に犬っぽい大きな耳、それからふさふさの尻尾を持った青年の姿をしている。  それだけでも異質なのに、左目の下から頬にかけてざっくりと傷跡のオマケまでついているのだから堪らない。  さすがにその姿のまま外出させると大騒ぎになるので、最近では耳と尻尾を人間のように化け直させることを覚えさせた。  実を言うとつい最近までは実嗣(さねつぐ)が何度注意してもありのままの姿で外出していた叶利だったのだが――。 「きゃー、可愛い! それ、何のコスプレですかぁ?」  中世のヨーロッパ風フリフリドレスに身を包んだ女の子二人に、キラキラお目目で取り囲まれて以来、さしもの叶利もちょっぴり懲りたのだ。  彼女らの、余りにも()をてらった格好――叶利が思うのも何だが――に一瞬気圧(けお)されて、彼には珍しく異性を前に口説き文句のひとつも放てずに尻尾を巻いて退散してしまった。  「こすぷれ」って何だ?と思って一緒にいた実嗣に聞いたら「お前のような格好のことだ」。  そう返された。  色々調べてみて分かったのだが、彼女たちのような格好も、「ごしっく・ろりーた」とか言って……「こすぷれ」なるものの一種であるらしい。  自分と彼女たちの間に流れる共通点は叶利にはよく分からなかったが、要するに他者から見ると自分も妙ちきりんに見えるということか……。  女の子なら来る者拒まず、去る者追いまくり……が信条の叶利だが、正直彼女たちにはひるんだ。  というのも、彼女たちは叶利の傷跡や犬耳、ふさふさ尻尾を見て色々とあらぬ妄想をしてくれたようだから。  きゃあきゃあ騒ぎながら交わされる「犬耳ちゃんが攻めだろうね。あの怖そうなお兄さん、きっとベッドの上ではむっちゃ可愛いんだよ」とか、「うそぉ。私は絶対犬耳ちゃんが受けだと思うよ。あの傷跡に優しく触れられたりするとね、すごく感じちゃうんだよ、きっと」とかいう会話は、ちんぷんかんぷんだった。
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