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実嗣に「受けとか攻めとか……どういう意味っすか?」と聞いたらブスッとした顔で「知るか」と吐き捨てられた。
あの顔は絶対知ってるに違ぇねぇ!と思ったけれど、そんなときの実嗣はどんなに食い下がっても一切情報を提供してくれないのが常なので、潔く諦めた叶利である。
後になって、あれは一部の女の子たちの間で流行りの「ぼーいずらぶ」とかいう男色思考に基づく用語で、攻めが男役、受けが女役――もちろん男同士で!――を意味する恐ろしい妄想世界の産物だと知った。
実嗣が不機嫌になるわけだ。
もちろん、女好きの叶利としても「頼むから非生産的な幻想は勘弁してくれ」と思ってしまう。
やっぱり身体を重ねるからには子供が出来なきゃ意味がないというのが率直な感想だ。
絶滅してしまった日本狼の変化だからか、叶利は人一倍種族維持本能が強かったりする。女好きたるゆえんだ。
やっぱり抱くならまろやかな線の女の子のほうがいいし、言うまでもなく男に抱かれるなんつーのは真っ平ごめんだ。
そんなわけで、最近では変な妄想のターゲットにされずに済むよう、ちゃんと実嗣の言いつけを守って外出している。
しかし、人間に見えるよう化け直してみたところで、叶利にはまだまだ目立つ要素がたくさんあった。
白銀色の髪や、浅黒い肌、それから頬の傷、長身……など。
Tシャツにジーンズというラフな格好で外に出ると、却って素の魅力が引き立ってしまい、図らずも周囲の目を引いてしまう。
「も、もしよかったらお茶でも……」
意を決したように声をかけられることもあれば、
「ねぇねぇ、暇があったら付き合ってよ」
なんて具合に軽い調子で声をかけられることもある。
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