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 最初のうちは、最近じゃ女の子のほうから平気で男に声をかけられる時代になったんだなぁ~と思って嬉しくなったものだ。  向こうから声をかけてくれるのなら、いちいち「俺の子供生んでくれねぇか?」と誘う手間が省けるのだから。  これなら子作りだって楽勝だぜ♪  満面に笑みを浮かべて実嗣(さねつぐ)にそう話したら、今の時代、そんな簡単に(はら)ませたりしたら養育費やら何やらで面倒なことになるんだぞ、と脅されてしまった。  何だかよく分からないが、居候(いそうろう)の身なので、涙を呑んでそれらの誘いを断ることを決意した。  きっと、ちょっと前なら手当たり次第に「頂きやす!」になっていたと思うのだが――。  何だかやりやすいような、やりにくいような……微妙な世の中になったものだ。  だから、できれば外出は一人ではしたくないというのが最近の叶利(かなき)の考えである。  実嗣と一緒に居てもヒソヒソと何かを言われたりはするが、声をかけられる確率はガクッと落ちるので断然楽なのだ。  きっと実嗣の、いつも怒っているような顔つきが、厄除けになっているんだろう。
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