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昔から人混みが嫌いだった。
人の足音、話し声、機械音、全ての雑音が耳の中に入り込み気分が悪くなる。
ざわざわ空気が鳴って目に見えない何かが頭の上で集まり空中に浮かぶようなそんな感覚。
その感覚を意識すればするほどそれは明確に見えてくる。
灰色、黒色、薄紅色
暗い色でなく明るい色もあるそれは、見ていて飽きることがない。
黒い靄の中に虫が這うように出来た深緑色の線や時折響く音とともに僅かに光ることもある。
人混みは嫌いだ。
しかし自分が生きていく上で避けられないのも事実である。
駅周辺や大通り、夜のネオン街
避けることもできるが、仕事上避けられないのも事実である。
避けられぬのならとその靄に興味を持ち始めたのはほんの一年前である。
色づき始めたのもその頃か。
あぁ、今日も音が鳴っている。
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