372人が本棚に入れています
本棚に追加
/324ページ
彼とご対面
それから一週間が経ち、その日の朝も琴葉と一緒に登校していた私。
学校の最寄駅に着き、いつも通り学校までの道を歩いていた。
「はぁ…」
琴葉と同じクラスで嬉しいはずなのに、自然とため息が漏れてしまう。
「咲、どうしたの?
ため息なんか吐いて」
「毎日、しんどいなって」
「ああ。秀太のこと?」
まさにその通りだったため、頷く私。
彼、筧くんとは席が前後だった。
その結果毎日のように話しかけてきて。
そのたびに嫌な汗が流れ、俯き逃げる日々が続いていたというのに。
中々折れてくれない彼は、ついに授業中にまで話しかけてきたのだ。
折れてくれない理由は、私に好意ではなくただ単に興味を抱いているからだろう。
「琴葉、やっぱり私無理だよ…怖い」
あんなにも避けているというのに、ずっと話しかけてきて迫られて怖いのだ。
「あっ、その件なんだけどね。
後輩から了承得たよ。
だから早速会って欲しいんだけど…咲?聞いてる?」
聞いているけど言葉を返せない私。
先ほどまで筧くんの話をしていたというのに、いきなり話が変わったからだ。
それに会って欲しいって、この間琴葉と筧くんが話していた“理玖”って人?
絶対に男の人である。
無理だ、怖い。
「向こうはいつでもいいって言ってたから、今日約束しちゃった」
「え…」
この時ばかりは琴葉を恨んでしまった。
心の準備ができていないというのに、琴葉はいきなり会えと言うの?
最初のコメントを投稿しよう!