彼とご対面

1/39
372人が本棚に入れています
本棚に追加
/324ページ

彼とご対面

それから一週間が経ち、その日の朝も琴葉と一緒に登校していた私。 学校の最寄駅に着き、いつも通り学校までの道を歩いていた。 「はぁ…」 琴葉と同じクラスで嬉しいはずなのに、自然とため息が漏れてしまう。 「咲、どうしたの? ため息なんか吐いて」 「毎日、しんどいなって」 「ああ。秀太のこと?」 まさにその通りだったため、頷く私。 彼、筧くんとは席が前後だった。 その結果毎日のように話しかけてきて。 そのたびに嫌な汗が流れ、俯き逃げる日々が続いていたというのに。 中々折れてくれない彼は、ついに授業中にまで話しかけてきたのだ。 折れてくれない理由は、私に好意ではなくただ単に興味を抱いているからだろう。 「琴葉、やっぱり私無理だよ…怖い」 あんなにも避けているというのに、ずっと話しかけてきて迫られて怖いのだ。 「あっ、その件なんだけどね。 後輩から了承得たよ。 だから早速会って欲しいんだけど…咲?聞いてる?」 聞いているけど言葉を返せない私。 先ほどまで筧くんの話をしていたというのに、いきなり話が変わったからだ。 それに会って欲しいって、この間琴葉と筧くんが話していた“理玖”って人? 絶対に男の人である。 無理だ、怖い。 「向こうはいつでもいいって言ってたから、今日約束しちゃった」 「え…」 この時ばかりは琴葉を恨んでしまった。 心の準備ができていないというのに、琴葉はいきなり会えと言うの?
/324ページ

最初のコメントを投稿しよう!