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「もういいかい?」
幼いころの記憶で一番古くて、しかも唯一のものは築百年余りと言われる純日本家屋の実家のたたずまいと、そこで行われる一人ぼっちの隠れん坊。
一人ぼっち?
ううん。思い出せないだけで、それは間違っている気がする。
「ヤナちゃんたちってば隠れん坊下手ね~。すぐに音出しちゃうんだもん!」
実家はとても古い家だったので、最近の家みたいに明るい照明はなかった。薄暗くてだだっ広い畳敷きの屋敷のなかには、図らずも沢山の闇が存在していた。
そんな、子供にとっては恐ろしかったであろう家のなか、幼い私は一人で留守番を言いつけられてもちっとも怖くなかった。
と言うよりむしろ楽しんでいたような覚えすらある。うちの田舎は過疎化が進み、遊び相手になってくれるような同年代の子が近所にいなかった。一人で外に出ても余り楽しくなかったし、屋内にいるときのほうが胸躍る何かがあった気がする。
それはきっと、時折フラッシュバックする台詞のなかの、「ヤナちゃんたち」という存在に関係しているんだろう。
今はそれがどんな子たちだったのか、そうして何故外を思い浮かべてもその子たちとまるで結びつかないのか、全然思い出せないけれど――。
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