episode255 愛を貪り食うもの

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「薔薇の棘さ」 「だからどうして?」 薫は溜め息交じりに低く囁く。 「俺見たんだ――明け方窓から——おまえ庭で薔薇の花を貪り食ってた」 「僕が花を?」 悪い冗談。 だけど無論、薫は冗談なんか言う男じゃない。 説明は面倒だと言うように薫は本のページを操った。 「ここ、読みな」 それだけ言うと本を突きつけ そそくさと巻き毛は書庫から出て行った。 僕は目を皿のようにして薫が開いて行ったページの文字を追った。 「睡眠時摂食症候群……無意識に食べ始める……症例によっては……食べ物でないものを食しても記憶にない……」 原因としては精神的ストレスが上げられる。  「精神的ストレス……」 薔薇の花を貪り食う巨大な毛虫は僕だ。 でもどうして? 2人分の愛を得て葛藤を捨てたはずなのに。 僕はまだ満たされていないのか——。 だけどこんなの事件の序の口に過ぎなかった。 教えておこう。 僕はまたすぐ死にかけるんだ。
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