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「あの男――あんたの除霊をしたって霊媒師が逮捕された」
「え?」
「もう分かってるでしょ?詐欺罪よ。インチキなやり口で金持ちの懐にばかり入り込んでとうとう訴えられたらしいの」
他人事みたいに言って首を傾ぐと
肩まで届きそうなダイヤのロングピアスがキラキラと揺らめく。
「訴えられたらしいって……訴えたのは誰でもないあなたじゃないんですか?」
「まさかそんな面倒なことするもんですか。私はちょっとばかり勘のいい知り合いにあの男を紹介しただけ」
僕が甘かった。
この人を敵に回したまま何も手を打たず放っておくなんて——。
「それで被害状況を知りたいからって家にも警察が来るんですって。その時は皆さんお揃いでお願いしますと言うから私、『分かりました。家族全員に伝えます』って一応答えておいたわ——でもそんなの面倒よね?」
これ見よがしに細い指先でトントンと
九条さんのポルシェのフロントガラスに女王様は灰を落とす。
「……面倒を回避して下さるの?」
転々と汚された白い車体を見つめたまま
僕は卑屈に声を潜めた。
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