43人が本棚に入れています
本棚に追加
あの除霊が偽物だと知れたら
然僕が双方に取り入っていることの辻褄が合わなくなってしまう。
「あらいやだ。私にそんなこと頼めた義理かしら?」
悪魔の紫煙。
尖った爪先が吸殻を虫けらみたいに踏み潰す。
「でもそうね――あんたが今ここでこの間の愚行を詫びるなら考えてあげてもいい」
「本当?」
覚醒した弟に無理矢理奪われた唇には
今は好戦的なほど赤いルージュが引かれ
「ええ。ここで跪き、私の靴を舐めて詫びるなら」
双子の兄によく似た嗜虐的な笑みが浮かぶ。
「そんな……」
拒否反応にうなじが泡立つ。
「いやならいいのよ」
しかし僕は長年良く躾けられた犬のように
この双子の命令を拒むセンサーがないみたいだ。
「分かりました……」
自分の意志とは裏腹に
信じることもできない取引に応じて膝を折る。
「吸殻を踏んだから綺麗にして頂戴」
自分を殺そうとした女の足首を持ち上げ
憎らしいぐらいピカピカのエナメルに視線を落とす。
最初のコメントを投稿しよう!