episode255 愛を貪り食うもの

12/30
前へ
/30ページ
次へ
あの除霊が偽物だと知れたら 然僕が双方に取り入っていることの辻褄が合わなくなってしまう。 「あらいやだ。私にそんなこと頼めた義理かしら?」 悪魔の紫煙。 尖った爪先が吸殻を虫けらみたいに踏み潰す。 「でもそうね――あんたが今ここでこの間の愚行を詫びるなら考えてあげてもいい」 「本当?」 覚醒した弟に無理矢理奪われた唇には 今は好戦的なほど赤いルージュが引かれ 「ええ。ここで跪き、私の靴を舐めて詫びるなら」 双子の兄によく似た嗜虐的な笑みが浮かぶ。 「そんな……」 拒否反応にうなじが泡立つ。 「いやならいいのよ」 しかし僕は長年良く躾けられた犬のように この双子の命令を拒むセンサーがないみたいだ。 「分かりました……」 自分の意志とは裏腹に 信じることもできない取引に応じて膝を折る。 「吸殻を踏んだから綺麗にして頂戴」 自分を殺そうとした女の足首を持ち上げ 憎らしいぐらいピカピカのエナメルに視線を落とす。
/30ページ

最初のコメントを投稿しよう!

43人が本棚に入れています
本棚に追加